たれみみの読書日和

読んだ本の紹介や日々をゆるりと綴っています📖*゜

『ツバキ文具店』小川糸*やっぱ手紙っていいな!大切な人に想いを込めて

今日から10月!涼しく過ごしやすい季節となりましたね。

今年の読書の秋も、たくさんの素敵な本と出会いたいものです☺

 

さて、今日は『ツバキ文具店』をご紹介します。

小川糸さんの作品を読むのは、食堂かたつむり、ライオンのおやつに続いて3作品目になります。

ほっこりと心温まる小川糸さんらしい作風で、この作品も大好きになりました♡

 

 

『ツバキ文具店』

 

著者:小川 糸

出版社:幻冬舎

発行年:2016年4月20日

 

あらすじ

舞台は鎌倉。《鳩子(愛称:ポッポちゃん)》は、先代であり亡き祖母《カシ子》から受け継がれたツバキ文具店で代書屋を営んでいます。

ツバキ文具店には、様々な事情を抱えた依頼主がやってきます。

依頼主の気持ちをじっくり聞き、ひとつひとつ心を込めて手紙を代書する鳩子。

依頼主やご近所さんたちとのあたたかな出会いを通じて心を和ませながら、祖母との関係を振り返り、自分の素直な気持ちと向き合っていく物語。

 

『気持ちを伝える』ということ

この作品を読んで初めて“代書屋”というお仕事を知りました。

今まで私は「手紙って自分で自分の気持ちを綴るから意味があるし、もらった側も嬉しいんじゃないの?」と考えていました。

でもそれって私の思い込みだったなぁと、この本を読んで感じました。

鳩子は、依頼主の気持ちをしっかり聞き取り、どんな文章で表現すれば相手に正確に伝わるのか、一緒になって悩みながら考えます。

加えて、依頼主の雰囲気や手紙の目的、内容、受取人との関係性等に合わせて、便箋の色や素材、筆の種類やインクの色、筆跡、切手の柄に至るまで念入りに選んだ上で、書き上げます。

そうすることで、相手の心にもしっかり届く手紙が出来上がるんです。

自分では上手く言葉にできないけど、何とかして気持ちを伝えたいとき。

書き方に悩んだ挙句『書かない』という選択をするよりも、誰かの力を借りたとしても、手紙を届けられた方が、きっと相手には喜ばれますよね。

送り主の『伝えたい』という気持ちそのものが大切なんだなぁと思いました。

そして『気持ちを伝えたい』『手紙を書きたい』相手がいることって、すごく幸せなことなんだなぁとも気づかされました。

 

ほっこりするキャラクターたち 

お話にはたくさんのユニークなキャラクターが出てきます。

年配だけど恋愛を楽しんで生きる鳩子のお隣さんで一番のお友達《バーバラ婦人》

バーバラ婦人のお友達でいつも明るくパンを焼くのが上手な《パンティ》

いつも着物姿でぶっきらぼうでせっかちだけど実は優しい《男爵》

鳩子の文通相手でお父さんが切り盛りするカフェを手伝う5歳の女の子《QPちゃん》

それぞれのキャラクターとのやりとりがとても微笑ましくてほっこりします。

私は特にバーバラ婦人が好きです。

あのね、心の中で、キラキラ、って言うの。目を閉じて、キラキラ、キラキラ、ってそれだけでいいの。そうするとね、心の暗闇にどんどん星が増えて、きれいな星空が広がるの。簡単でしょ?

ポッポちゃんのおかげで、今日もまた特別な一日になってきたわ。ありがとう。

少女のように素直な言葉に癒されました。

バーバラ婦人がお隣さんだったら、楽しそう。

彼女のように、いくつになっても、毎日をとびきり楽しく生きられるような心掛けができる女性になりたいです。

 

大切な人へ想いを込めて

作中で、鳩子は祖母との関係を振り返ります。

子どものころから厳しく育てられた鳩子にとって、祖母は反発の対象でした。

でも、物語が進むにつれて、祖母の本当の気持ちに触れることになり、自分が祖母に対して抱いていた気持ちを再確認します。

手紙って、遠く離れた人には出すけれど、近くにいる人にはなかなか書きませんよね。

近ければ近いほど、自分の気持ちを素直に伝えるのは難しいもの。

家族となると、余計にそうだと思います。

だから鳩子の気持ちを想うと切ないけれど、とても共感しましたし、近い存在だからといって、相手のことをわかったつもりになってはいけない、自分の気持ちをわかってくれているはずだなんて思ってはいけない、と改めて感じました。

遠くにいる人にも、近くにいる人にも、大切な人へ想いを込めて、手紙を書きたくなりました。

 

何度も読み返したい、大満足の一冊。

そしてなんとこの本、かわいい鎌倉案内図まで載っているので、ガイドブックにもなってしまいます!

この本を片手に鎌倉を旅する日がやってくるといいなぁ♪